Amazonで見つけた新作。マーシー裁判(AI裁判、今んとこ100%有罪)に妻殺しの容疑でかけられたクリスという警官の話なのよ。
驚愕すべきは演出ね。まずセットやカメラワーク周りはかなり条件が厳しいのによくやってるわ。椅子に固定され、目の前にAI裁判官が出てくる。そんな限られた絵面で2時間近い映画を魅せるのよ。顔の左右から黄緑のライトがほんのり当たっていて、明らかに味方ではないことがわかる演出。
さらに、CGのレベルが高くて見せ方が適切だからこれ以上ない近未来感なのよね。証拠や通話などのデータがすごいスピードで展開される。被害者の交友関係とかがまるでAppleがやりそうな顔アイコンを周りに配列するやり方で表現する。映像とBGMの連動もスタイリッシュ。
ストーリーとしては裁判官の左上に有罪率97.5%、右上には残り時間90分が表示されるというかなり追い詰められた構成。緊張感が高まるわ。演出のテンポは極めて早く、あのグランツーリスモ(良作判定)よりスピード感がある。裁判という動きのない舞台だからこそこのテンポを選んだのだと思う。あっぱれだわ。
クリスは酒癖が悪く禁酒を破ったりバーで騒ぎを起こしていたりで裁判にもかなり不利な要素が集まってくる。さらに娘のインスタの裏アカ、妻の浮気などのショッキングな事項も判明しストーリー展開はハード。
そんな中で妻の同僚の間で起こった盗難、大量の尿素が爆薬に使われているという一連の流れが浮かび上がってくる。無実の罪で兄弟が逮捕された結果として警察に恨みを募らせた同僚が妻を殺した挙句テロを起こそうとしてんのね。
クリスの無罪で裁判は終了となるところだがクラウドにアクセスして犯人を追えなくなるため裁判続行の体で現場へ向かう。あんなに終わらせたがっていた裁判を自分の意思で続行するというこの流れが本当に美しいわよね。
娘が人質に取られていて、マーシー裁判官とともに説得する。その過程で、頼もしい同僚警官が目的のためなら手段を選ばない不穏さを出していたのだけれども実はマーシー裁判の狂信者でかつて証拠隠滅を図ったことが明らかになり、犯人ごと捕まる。クリスは娘と抱き合う。抱きついた娘の手の爪や指輪とか、ディテールもちゃんと作ってあってこの監督のやる気を確認して終了よ。
最後エンディングまで良かったからね。物語に出てきた要素をまるで氷の器に閉じ込めたような冷たい画が出てくるのよ。曲もそれにマッチしてて余韻が感じられたわ。有罪率を示すインジケーターとかが再登場してて、しっかりこの作品を象徴するアイコンになっていることを再確認するわ。
ただ、映画のスピードが早すぎて娘が攫われたのを理解するのに少し遅れたのよ。そこがちょっと残念だけど、このテンポは映画の娯楽性を担保するために必要なものだからまあいいか。あと、クリスは直感派で裁判官の理論と対立するみたいなところの入れ方はちょっと本編から浮いて浅かったわ。直感のことを「直感」と言っちゃうし(言わずに表現がベストね)、クリスの思考の流れは視聴者に説明されないからね。でも悪いところなんてそんなもんよ。
総じて、限られた条件で世界観を構築して美しいストーリーの流れで視聴者を最後まで連れて行ったんだからこれは傑作(★★★★)と言ってもいいかな。もうね、今回の監督はめちゃくちゃやる気があって本当に嬉しいわ。前に傑作判定したガタカが雰囲気由来の設定優位としたらこっちは映画撮影技術由来の雰囲気が抜群ね。おすすめよ。ごきげんよう〜
↓雰囲気由来の設定優位「ガタカ」
↓テンポの早い「グランツーリスモ」
