「なんかファンタジーみたいな本が読んでみたい」という漠然とした欲求が出てきたので、有名どころのダレン・シャンを借りてみた。裏表紙の「全国学校図書協議会選定図書」という文字に期待が膨らむ。ハリーポッター的なファンタジーを勝手に想像していたが、かなり違うものであった。最終的に読み終わってなんちゃら選定図書に偽りのない名作だとわかった。【ネタバレ注意!】
目次が参考にならない名作
ざっくり話すと、登場人物は、主人公ダレン・シャンと友人スティーブとサーカスに登場するヴァンパイアの三人を覚えておけばよい。フリークショーという異形のサーカスをきっかけに、ダレンはヴァンパイアの飼っている大蜘蛛がほしい、スティーブはヴァンパイアに弟子入りしたいと動き、その行動の歯車が悲しい結末に噛み合ってしまうというもの。
一つ二つ先の目次でも全然参考にならないぐらい展開が読めないところが面白い。目次に「葬式」と書いてあったので、病院送りになったスティーブが死ぬじゃんと思っていたが葬式はスティーブのものではなかったりとか。結局ダレンがヴァンパイアになる条件でスティーブの命を救うのだが、ヴァンパイアになることを以前拒まれていたスティーブとは敵対して命を狙われることになる。スティーブは賢いし、自分もまだまだ子供だと言うメタ認知もできているので相当手強いと思う。はやく次の話が読みたいところ。
特に怖かったところは前半のサーカスのとこ
この本はファンタジーですらなかった。けっこうダーク。主人公は蜘蛛が好きでよく執着する。蜘蛛を掃除機で吸い込んでバラバラにしてしまうあたりから不穏な空気が漂っていた。ストーリーは、身体的に異形の人間(フリーク)を見世物にするサーカスのチラシを入手して、何とか見たいと子どもたちが画策するところからはじまった。私は裏表紙を見返した。本当になんとか協議会が指定してる本なのよね?
このような調子で続き、ふりがな付きの本にトラウマを植え付けられかけた。異形サーカスの序盤に狼男が出て、事故で観客が大怪我をしてしまった。魔法の粉で痛みを消して怪我を縫い合わせて事なきを得るという、この収め方がなんとも不気味だ。縫い跡残るし。ふりがなついてるんだから小学生向けだよねこれ。私はこの本を最後まで読めるのだろうか?と、再度裏表紙を凝視した。これ、なんとか協会が指定した図書なんだよね?私はたいしたことないもので失神しかけた実績があるので、だいぶ不安だ。この本は寝る前に楽しんでいたが、そろそろ寝る前に読むのはやめておいて、茶の間で読んで家族がいるうちに怖いところを怖いと話して気を散らした方が良いと思った。
後半は重要な心理的局面があるので、心の修行になりそう
最終的にサーカスのところを乗り越え、最後まで読めた。スティーブが病院送りになった後から展開が特に早くなるし、楽しくなってゆく。「ダレンあんたどーすんのよ」と思って次々進んで行けるだろう。本のしおり代わりに観光チラシを半分位に折ったものを挟んでいたのだが、ハードで奇怪な内容と「松島グルメマップ」というのんきなロゴの対比が際立つ。前半はグロテスクなのも少しあるが、後半は、決断や親しい者との別れの辛さや行き違いの悲しみなど心理的なつらさを疑似体験できる。幼少期に触れておくハードな話としてすごく良いというのが、この本の持ち味だと感じた。この裏表紙の「なんとか協会」を私は見直した。けっこうハードな本指定するじゃん!ごきげんよう~