北野武監督映画ね。内容が難解なんだけど見てしまうのはカメラワークとナンセンスが良い化学反応をしているからだわ。売れない役者の北野と売れっ子のビートたけしが出会うのよね。ただそれに大きく意味があるかと言うと、話の途中で場面が飛んで展開し、だいたい拳銃で人が死に、夢でしたとばかりに戻って来る。このパターンが多い。のに見ちゃうってどういうことなのかしら。
ファンの子が人違いで北野にプレゼントをあげるんだが、ボロアパートの入口で待ち伏せているからほんとに北野のファンなのか?どっちなのかどんどんわからなくなってくる。この映画はそういうのが多い。
北野は役者を目指している。ラーメン屋のオーディションのくだりで北野が合格するんだろうと思ったら合格しないのよね。その一方で何も描写がないところで合格したりしていて本当か?こういう肝心のところで止まる構成が多い。しかし、じれったいと感じる前に大量のナンセンスで片付けられるのよね。情報量はそこそこ多いと言える。
北野が無愛想なラーメン屋に行くんだけど、ラーメンを食べるのを映すアングルがカウンターの向こう側からなんだよね。これが気まずさや退廃性や緊張感につながっているのかしら。これの他にも、自宅で一人ぼっちで食事をとるしょぼくれたシーンが妙に映えるのよね。なにもないアパートの台所が映り込んで。すごくしょーもない生活というのが引き立ってくる。
その生活に加えられるアクセント(ナンセンス)が必ず暴力なのよね。ラーメン屋の無愛想で失礼なおやじを撃ち殺すような納得できるものから、唐突に麻雀の店で暴れるようなものまである。ある程度報いを受けるべき人物が必ずいるが、程度の大小はあるのよね。でも殺すときは必ず拳銃なのよ。
個人的ハイライトは、終盤の撃ち合い。夜の草原で撃ち合ってたら、そいつらの立ち位置からオリオン座が浮かび上がってくるのよ。いよいよ何をみせられているんだというのが激しくなってきたところだわね。ここが劇中で一番ナンセンスのパワーを感じた場所だったわ。
あとは優れた暴力描写。「人殺し」と言われたあとに人殺しをする斬新さ。人が死ぬ場面ではとにかく淡々としているのよね。これが白昼夢感に拍車をかけている。
後半部分の海辺は流石にテンポが悪いかなと思うところで、全編が私の好みという感じではなかった。映画は最後に、冒頭に映ったシーンに回帰するんだけど、それがなんなのか分からんかったわ。
映画は難しいが、ある程度考察をしたくなる組み立てをしていて、完全に支離滅裂ではなくて首の皮一枚でつながっているのを感じるわ。ナンセンスと暴力が主体で、カメラワークは興味深かった。これは個人的に良作かなあ。ごきげんよう~
![TAKESHIS' [Blu-ray] TAKESHIS' [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51P12PFQM+L._SL500_.jpg)