ステキな4コマ

毎日更新。映画感想と日記の日替わり(ネタバレあり)。

顔のせいにできないけど顔の話「顔を捨てた男」

OPの時点で演出がいいことを悟り、期待値が高まるわ。特徴的な顔を持つ男の話なんだけど、テーマ曲(しょぼくれ感と不穏さがある)と共にこの顔の医学的データのようなものが映し出されるのよね。これがこの顔がもう動かしようがないという事実として重くのしかかるわ。

顔を捨てた男

特徴的な顔で大変な思いをして生きてきたであろうことが伝わり、今の生活の冴えなさも巧みなしょぼくれ演出で引き立てるわ。個人的ハイライトは主人公エドワードの枕。3つある枕のカバーの柄がそれぞれ違うんだけどどれもしょぼくれてるのよ。色褪せたブルーのストライプとか。家具とか小物もこれだけ拘ってるんだというのが伝わるし、ちゃんと登場人物の印象として感じられるわ。

前半の見せ場は医療のシーン。ものが溢れてる生活とは違うカメラワークでメリハリと緊張感を持たせているのがわかるわ。薬で顔を治すことができるというのよ。徐々に顔の皮膚が剥がれ落ちるスリラー演出は肝心のところは鈍いガラス反射でぼかすなど、わかっている演出が光る。

顔が変わったことによるカタルシスも、外出して街を徘徊する後ろ姿の切り替えの速さで伝わるわ。今までのエドワードは死んだことにして、ガイという偽名で暮らす。以前交流があって心を寄せてた隣人(脚本家)を見かけてついていくと、「エドワード」という劇のオーディションをしているので飛び入り参加する。

役も手に入れて隣人とも仲良くなって順風満帆かと思いきや、隣人の知らない方が幸せだった一面を知ったりするのよね。プレゼントの扱いがぞんざいだったり。挙句、過去の自分と同じような特徴的な顔のオズワルドという男が現れる。

「エドワード」は今までの人生そのものだったはずが、オズワルドに役も奪われてどんどん劇の内容も書き変わっていく。エドワードはお情けで心象風景的にイケメンになったエドワードみたいな設定で首の皮一枚で残される。顔が変わったらエドワードじゃないなど話し合う哲学も展開されて物語とつながりがあるからスッと入ってくるわ。

最終的に、オズワルドというカリスマ男(しかも性格も良い)に隣人もアイデンティティも全てを奪われて、しょぼくれ時代よりも絶望することとなる。最後は舞台を台無しにした挙句自業自得で怪我をして、暴力沙汰で服役、出所した後にはオズワルド夫婦は引っ越すというがカルトの気配がして不穏。そしてエドワードはこの後どう出るのか…でENDよ。

前半のしょぼくれと後半のオズワルドのカリスマでメリハリが効いている映画だったわ。演出面でも文句なしよ。あとで調べて、オズワルドは本当にその役者さんの顔だというのもびっくり(失礼ながら)。この役者を起用するためにあり、テーマも唯一無二、噛み合っている映画だわね。

これでテンポがもう少しだけ早ければ私好みの傑作だったわね。でもこの映画らしいテンポはこれかなとも思う。もはや好みの問題だわ。これは良作(★★★☆)かつ怪作だわ。なかなか同じような映画は作れないでしょうね。とても満足してるわ。映画好きな人が1人で見るのには断然おすすめね。ごきげんよう〜