ステキな4コマ

毎日更新。映画感想と日記の日替わり(ネタバレあり)。

うっとりため息「羊たちの沈黙」

こんなに出来が良い映画があるとわね…。ため息ばっかり出るわよ。FBIの主人公が、殺人鬼(レクター博士)に話を聞きながら別の殺人鬼(人の皮を剥ぐ)を追う流れなのよね。なんとも言えない嫌悪を引き起こすメインビジュアルも素晴らしい↓

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最初に殺人鬼と話す前に檻を映して主人公たちを待ち構えるカメラワークが良かったわ。ただ、すごく目立ったカメラワークじゃないのよ。なのになんだか見ちゃう、説明できない素晴らしさ。これは傑作の予感。

セリフ運びが絶妙なのよね。殺人鬼レクター博士の何が危険なのかなってときに人を殺して「あなたは食べたわ(人を)」って後からセリフで情報が開示されていくのよ。最初の1手で視聴者が納得するような設計になっているから追加情報の意味がとても重いし納得できるのよね。

そしてこの作品の最大の特徴が「間合い」なんだわ。このシーンの続きが見たいなと思わせる腹七分目のタイミングでカメラが切り替わる。これは「七人の侍(傑作判定)」以来のことだわ。とくにこの間合いをわかりやすく感じるのは、死体の口からピンセットで繭をつまみ出すシーンだわね。何が出るかというカメラワークの盛り上げ方も完璧なスリラーのそれだわ。

キャラクターの振る舞いも意外なんだけど奇をてらったようなものではなく、物語から想像しうる最も質の高い逸脱という感じで驚きっぱなしよ。議員の娘が誘拐されたので真相を知ってそうなレクター博士を輸送して話をさせるのよね。そしたら「娘さんの時間が惜しい」といって早速話す協力的な姿勢なのよ。ところがその後「母乳で育てたか」とか個人的なことを質問し始める。

タイトルにもなっている子羊のところは主人公の過去トラウマからくる景色なのよね。その羊の鳴き声が、この殺人犯を捕まえることでおさまるかも、という感じらしい。他にも蛾が変化の象徴であるとかの哲学要素もある。

この映画が優れているのは、ある程度難しいやり取りを聞き漏らしたとしてもあとで絵面で保管されるから最終的にそんなに取りこぼしがほぼないことね。

映像のトリックも巧み。レクター博士の脱走シーンと、犯人宅への突入があるわね。後者は、家の中と外でカメラを分けていたから上官が家を突き止めたのかと思ってすっかり騙されたわ。犯人宅に誘拐された被害者がちゃんとうるさくて勝手なところもリアリティがある。犯人は逮捕できたもののレクター博士は脱走して逃げ切って、物語は続くことを予期させて終了よ。

こんなに爪の先まで神経が通ってる映画は久しぶりね。マーシー(傑作判定)のように監督のやる気次第で上り詰められる傑作の領域とは正直桁が違うわ。圧倒された。これは傑作中の傑作(★★★★)だわね。今年1番を更新した。恐れ入ったわ。ごきげんよう~

↓「間合い」という概念の元祖

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↓監督のやる気があるマーシー

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↓同じく傑作判定のガタカ

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