最初はシングルマザーの主人公ヴァイオレットの周りや家庭事情の描写から入るわ。カメラワークは悪くなくてまあまあ期待感ある。前の旦那と争う場面がフラッシュバック的に挿入される。今回はマッチングアプリで出会った男性と初めてデートする場面で、高層ビルのバーに行ってからが本番。バーに着くとさらにカメラワークが良くなる。
バーに行って待ち合わせ相手を間違えたおじさんと意気投合してるとお互いに待ち人が来る。座席につく時とか、遠景から座席の間を縫って主人公たちを映しに来るカメラワークはその場にいるようなライブ感・臨場感があって好感触だわ。
そしたらAirdropという近くの人に写真を共有する機能(証拠も残らない)を使って不気味なメッセージが送られてくるのよ。息子を人質に取られ、ヴァイオレットはレストランから出られなくなる。机の中つまりiPhoneの視点のカメラからヴァイオレットを映すなど、焦りが伝わる演出だわ。
指示は、デート相手の男(いい人、カメラマン)のカメラのSDカードの破壊。しかし要求が進むとカメラマンの毒殺を言い渡される。チップにヘルプメッセージを書いたりしても女子トイレに入っても見抜かれてしまう。もちろんカメラマンにもバレてはいけないのでデートもどんどん気まずくなる。演出とストーリーが噛み合って良い化学反応を起こしているわね。目が離せないわ。
ウエイター、感じのいいバーテンダー、最初にぶつかった男など犯人候補もけっこういる。みんなヴァイオレットのことをそこそこよく見ているから疑わしいのよね。
話の転換点は「情報の開示」なのよね。前の夫のDVからいかに逃れてきたかと言う話しづらい話をすることで2人の間に再度信頼関係が芽生える。これも人間のセオリー通りで綺麗な設計だわ。
そんな中、犯人が待ち合わせ相手を間違えて意気投合したおじさんだったと明らかになる。おじさんは先を読んでいると言うが激しいDVをサバイブしてきたヴァイオレットの方が一枚上手だった。おじさんの視線が逸れた隙に、カメラマンに入れるはずだった毒をパンナコッタに仕込んでたのね。前にもダメな映画でパンナコッタが出てきたけどこの映画は格が違うわ。
このあたりから、私が好きな「戦う女性もの」の要素も強まってくる。暴れるおじさんを倒した後、カメラマンの車を借りて自宅まで向かうヴァイオレット。冒頭で息子がラジコンカーで愛する母に手紙を届けていたんだけど、それと全く同じ動きで犯人から叔母が奪った拳銃を母の元へ届けてトドメを刺したわ。正体は前の夫ね。
結局なんでヴァイオレットが狙われたのかとかはざっくり流し見で「へー」くらいの理解感。ここそんなに重要じゃないからいいわ。メリハリが効いてるとも言える。入院したカメラマンを見舞ってさらなる進展を予期させて終了よ。
このストーリーの驚くべきことはカメラマンがいい人すぎるが、それでも物語の中に違和感なく組み込まれて悪目立ちしないことよ。物語に都合のいいだけの装置を、視聴者は敏感に感じ取るわ。でもそれを感じさせなかった。会話や動作のディテール作りがしっかりしてるのね。プロット自体も面白いながら、とにかく演出が光ってたわ。
その一方で、Airdropを使う以上の「この映画らしさ」が見たかったかなとも思うわ。いい映画を見たら見たで欲が出てくるのよね。この演出の腕前があればいくらでも良作は作れるけど、その中で…と言う特徴がつけられるポテンシャルがあるのよね。この映画は総じて文句なしの良作(★★★☆)だわ。ちょっと高くて美味しいレストランに行って料理が予想通りで満足した、と言うようなイメージね。この監督の他の映画もチェックするわ。ごきげんよう〜
↓パンナコッタで引き合いに出されたダメ映画
