世界の黒澤明、初体験だわ。百姓が集落を守るためにお侍を雇うという変わったストーリーの映画。そんな物語だとは知らなかったわ。この映画を見て、最初から異変に気づいたわ。テンポもカメラワークも飛び抜けて良いわけじゃない、なのになぜ見てしまうのか?百姓が嘆く尻を眺めながら30分くらい悩んだわ。
演技主体、感情表現はカメラワークではなくセリフですべて表現する、とにかく「事実」を映したタイプの映画。お侍が集まり始め、それぞれの個性や優しさが見え隠れし始めた頃に謎は晴れてくる。結果として、私が自信満々に評価軸に掲げていた4項目「カメラワーク」「テンポ」「キャラクター」「パワー」がいかに未熟であったかを思い知らされたわ。
黒澤映画には「間合い」という概念があったわ。テンポの極致みたいなものね。注意を引き付ける最大限の効果のある間合いでカメラを切り替えていることがわかったのよ。特に、1人目のお侍が女房役と再会して会話を交わすシーン。「なつかしいな」という気持ちや雰囲気を感じてそのあと「百姓の里を一緒に守る仕事をしてほしい」の話に移行するんだけど、この配分が絶妙なのよね。懐かしい気持ちや先が気になる度合いが最大になったところでカメラが切り替わる。カメラワークには小技なども利かせず情景を映している、視聴者がその場に居合わせているような雰囲気のもの。
この間合いのポイントは「腹七分目」にあると見たわ。視聴者があとちょっとで満足する、もっと見たい、なにが起こるんだろうというのを満腹になる前に次のシーンへつなげていくのね。この繰り返しで映画に没頭していくわ。
更にポイントは、お侍のキャラクターね。同じ困っている人がいたとて、7人それぞれ同じ慰め方をしないであろうと確信できるキャラクターの立ち方をしているわ。一番若いお侍・勝四郎は金持ちの家を飛び出してきたという設定があるんだけど、それが振る舞いや顔つきに表れている。ムードメーカーもつとめる菊千代も、ふざける場面こそ多いが決して同じふざけ方をせず、暗い生い立ちや泣くことを嫌うなどがはっきり出ている。リーダーのお侍・勘兵衛は人徳を感じさせるふるまいの一方で、任務を投げ出そうとする百姓に刀を抜くなど使命への責任感と非情さを見せる。結果として4人を失い、残った3人のお侍が百姓たちの田植え歌を聞きながら墓参りをして終了よ。
ストーリーは導入こそ変わっているものの、お侍が集まり始めてからはシンプル。これで通用するためにはキャラクターかカメラワークで魅せなければならなかったが、黒澤映画は強烈なキャラクターとともに、「間合い」という概念を私に提示してきたわ。ここまで想像を超える作りになっているとは思わなかった。映画は3時間30分と超長丁場だが、見た甲斐があった。集中しっぱなしで疲れたわ。
さらに、特典映像もある。そこには目のハイライトへのこだわりなど、私が気づかずに本能レベルで画面に没頭する仕組みが作られていたことが明らかになる。さらに、水車小屋は雨のシーンを撮影したため湿気を含んでうまく燃えず、3回も建て直して成功したとのこと。この映画の美術スタッフから脚本家までインタビューすると「ここまでやるのか」「大変だった」「やんなっちゃう」との言葉が聞かれた。本当の傑作というのは、こういう感想が出る映画なんだわね。スタッフや役者に映画を絶賛させてばかりで実態が伴っていなかった「素晴らしきかな、人生!(ダメな映画判定)」の監督は見習ったほうがいいわね(過激派)。
ここまでの評価の通り、傑作(★★★★)と言って差し支えないわ。ちょっと長かったのも事実だけど、私の映画観が覆った大作だわ。これは他の黒澤作品も見てみなければ。ごきげんよう~
↓引き合いに出されたダメ映画
![七人の侍 4K リマスター [Blu-ray] 七人の侍 4K リマスター [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51PVAWloEgL._SL500_.jpg)