ステキな4コマ

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奇跡が悲しく際立つ「戦場のメリークリスマス」

日本軍と外国人捕虜の話なのよね。いきなりテーマとして難しいわ。ただそれでもついていけるのは、最初からいきなり振るわれる暴力と、目撃者としてのカメラワーク。

戦場のメリークリスマス

ビートたけしが演じるハラ軍曹と、通訳ができるローレンスという捕虜の話ね。外国人捕虜が処刑されるかと思いきや、判決が延期になったり、切腹の様子を捕虜に見せたことでショック死する人が出たりする。

本作の個人的ハイライトは、ハラ軍曹のセリフね。ローレンスのことをとても気に入っているんだけれども、「死んだらもっと好きになる」と言う。このセリフに世界観がよく現れている。死を恐れる=恥と捉える日本特有の軍隊の思想が出ているわけね。

独房から脱走したローレンスを仕留めようとした男が失敗して切腹するシーンがあるんだけど、ここのカメラワークが印象に残ったわ。「申し訳ありません」のとき、カメラは仕留め損ねて地面に刺さった剣から、謝罪する男へとカメラが引いていくのよね。軍隊や兵士にとって地面に突き刺さっている剣と言うのは要を果たせていない、ここで失敗したことの象徴よね。

ところがこの日はクリスマスで、ハラ軍曹は酒に酔った勢いでローレンスらの釈放を命じた。その時の言葉が「メリークリスマス、ミスターローレンス」。クリスマスプレゼントだというのよね。ここでなんとなくいい予感がするじゃない。一方でこの厳しい世界観で起きた奇跡はこの後も通用するの?と思うわけよ。

外国人捕虜のジャックが弟の夢を見ると言う話もあった。そこには後悔が現れている。いじめられている弟に関わりたくないリアルな心も出ている。そのジャックが、日本軍のジュネーブ条約違反の捕虜への仕打ちに非暴力で反抗したのよ。結果としてジャックは地面に首だけ残して埋められて死んじゃうのよね。後悔を善行で晴らして命が救われるわけでもなんでもない、厳しいわね。

そこから4年後に出家したハラとローレンスが再開する。もう軍隊のような上下関係ではなく。亡くなったジャックの話をして、そしてクリスマスを祝う言葉をかけて終了よ。戦争は終わって周りの人は亡くなったけど、この2人の間にある奇妙な友情だけは残ったのね。

この作品の特徴は誰にとっても都合の良くない人間の動き。つまるところリアリティね。しかもそれが軍隊と言う狂った秩序の中で救いようもなくそれぞれが動いて、クリスマスの奇跡がひとかけらだけある。クリスマスの中で生きる/死ぬと言うテーマが鮮烈だわ。これの一つ前に見た「素晴らしきかな、人生」(ダメな映画判定)はこれくらいやらなきゃダメなのよね。

この映画は、世界観とストーリーで魅せるタイプ。娯楽として見たときには少し難解だが、表現方法やストーリーに学びが大きかったので、良作(★★★☆)相当と言えるわね。ごきげんよう~

↓クリスマスに生と死を扱おうとして失敗した作品

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戦場のメリークリスマス

戦場のメリークリスマス

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