公務員組織の話なんだよね。新人が出勤していくんだけれども、その時点でカメラワークが良かった。書類の山の中で仕事をして、市民の嘆願書を部署たらい回しにするそんな毎日。
実はこの映画の主人公はその課の課長で、癌で余命半年と宣言された。息子夫婦が同居しているが関係性も良さそうじゃない。特に嫁が糞(直球)。仕事を欠勤してリゾート地に赴いた課長はそこで出会ったうだつの上がらない映画監督と意気投合、人生の楽しみ方がわからないのを助けてもらう。なんかオルガンのあるバーに行って意味深な歌を歌っていたわ。
そうして街に戻ってきた課長はちょっと変わり始めるのよね(劇的に変わらないリアリティが良い)。転職予定の同じ課の子が偶然街で声をかけてくる。そのあとフォートナム&メイソンで推薦状を書いてお茶をする。この子と親密になって行くのよね。相変わらず家族には癌のことを切り出すタイミングが掴めない。
あの子が転職したレストランに行ってみると管理職のはずが現場で給仕している。それを見た課長が「私が何か言おうか」って言うのよね。同じ部の人と関わって、自分ができることをやろうと言う心持ちに変わっているのがわかるわ。この変化が穏やかなグラデーションなのもリアリティを感じる。
その子を仕事の後に飲みに誘って初めて癌を告白する。そして「生きることを知らずに死にたくない」と言うのよね。この後仕事に復帰して精力的に働く…と思ったら次のシーンでお葬式になってるのよ!まだ続きそうな雰囲気だったのに。息子曰く課長は雪の中で亡くなっていたらしい。癌のことを話してくれていれば1人にしなかったのにと。
このあと、課長の仕事ぶりを見ていた人たちが語る形式で亡くなる前までの話が綴られていく。子供の遊び場を作って欲しいという嘆願書を受けて粘り強く交渉し、小さい公園が完成したというのよ。課の新人が公園を通りかかるとお巡りさんがいて、あの時課長がブランコで歌を歌って幸せそうにしていた、せめてひと声かけていれば…と話をしてくれた。
最後に生きてて良かった、となるはずだが家族とのすれ違いやお巡りさんの後悔など、リアリティのある範囲での大小ある悲しさが課長の人生を引き立てるわ。イギリスの英国紳士ということで映画全体のクラシカルな色合いとビジュアル面も完全に噛み合っている。全部が都合よく終わらないところがとてもいい。押し付けがましくない感動作だわね。最初2回に分けてゆっくり見ようと思ったらやめどころがわからんくて一気に見たわ。単純に出来がいいから誰が見ても満足するんじゃないかしら。良作よ(★★★☆)。ごきげんよう〜
