
涼しい秋の日。勉強日和だわ。そんな日に私は東大の安田講堂に来ていた。学生運動があったとかで教科書に載ってる有名なとこよね。もっと朽ち果ててると思ったらそうでもなくて、中もキレイだった。ちなみに文化財なので中で飲食はできませんとのこと。

- ISSAY MIYAKE~ピタゴラスイッチ
- モルツ~バザールでござーる~影のアスリート
- コイケヤ ポテトチップス のりしお
- トイレ休憩~ミロ
- 作品未満の要素収集の重要性~ドンタコス
- 時間内に終わらず強制終了
ISSAY MIYAKE~ピタゴラスイッチ
大拍手のなか佐藤先生が登壇され、自己紹介兼お仕事紹介に入る。どうすればわかるか、どうすれば伝わるかを中心にお仕事をされてきたそう。ISSAY MIYAKEというおしゃれブランドがあるが、先生はその映像も作っているらしい。会社としては一枚の布から身体と向き合うことを追求しているそうだわ。ここで人間の関節(頭、肩、腕、手、腰、ひざ、足など)にISSAY MIYAKEの文字を当てはめて歩かせた映像を見る。少ない要素なのにちゃんと人に見えるのよね。
次にピタゴラスイッチの話。子供の集中力は1分半しかもたないから小コーナーをたくさん作ってジングルで区切ろうという構成になったらしい。ピタゴラ装置のエッセンスとして「メカニズムの事典」と言う図書をおすすめされた。「これ読むのはちょっとお父さん大変ですけど、理系の子供がすくすく育ちます」とのこと。このあたりから先生はとてもお話好きでサービス精神が旺盛だと感じたわ。暖かい雰囲気。
モルツ~バザールでござーる~影のアスリート
あとモルツのCMを見た。ここから音や音楽による視線誘導というポイントが見えてくる。メモを机に置くところで音楽を止めるから主役の男性じゃなくてメモ用紙に視聴者の視線が移るのね。
同様の事例がバザールでござーるのCM。これは横浜の展示会でも子供に大ウケらしい。あとは坂道を下るだけのトロッコにカラスがちょんと体重をかけたせいで逆走するというシンプルなもの。先生が検証した視線の遷移も確認すると確かに画面の半分以上を占める目の前の坂道に視線が吸い寄せられている。これは人間の脳が優秀だからこうなっているとのこと。先生も「なんですかこれは(視線誘導の結果)」と、ドヤ顔がチャーミング。
他にもコピーライターとして本の帯を書いた話が楽しく、経済系の本だったんだけど「日本経済新聞」と帯に書いたそうだ。確かに売れそう。特にジーンときたのが「影のアスリート」というオリンピックのビデオの仕事。無名選手の起用のみ、言語を超えた表現という制約の中先生が生み出したのはアスリートの影を映すことだったのよね。影は全ての生物にとって平等というのもこのテーマと噛み合っていたわ。
コイケヤ ポテトチップス のりしお
ここから本題。映像から音を作るが先生の柱になっていて、ここから数々のCMが誕生した。まずはコイケヤのポテトチップスののり塩。当時のコイケヤはプレハブ小屋から世界を目指していたという。「その前にカルビーがあるんじゃないか」と思いつつ先生は仕事を受ける。
「ぱりぱりのりしおやっぱりのりしお」というリズムある言葉が最初に生まれ、そのあと「この音が汽車の車輪とシンクロするんですね」と先生。シンクロしねーよ!ここに先生の恐ろしいアンテナの片鱗が見え隠れする。そして汽車は走り出した。子供達の遠足シーンだが、汽車のスピードが最高潮に達すると「コイケヤコイケヤコイケヤ…」という狂気。このCMの恐ろしい中毒性よ。あとせっかくの汽車なのに空が曇ってるのがおもしろポイント。美しい条件が揃ってないリアルさが狂気をより引き立てる。
トイレ休憩~ミロ
このあたりでタイムキーパーから「おわり」が提示され、トイレ休憩となる。ちなみにだいぶ予定から遅れているらしい。先生のサービス精神が仇となる。休憩終わって、ネッスル(ネスレ)のミロのCMとなる。ここからはリップシンクロの重要性が説かれる。先生が喋りながら口元を隠すと、なんとなく集中が下がるのがわかる。必ずCMでは動いている口とセリフがシンクロしなければならない(シンクロすればそこに視線が集まる)。
ミロのCMでもコイケヤと同じリアルな子供たちが用いられる。「地方戦ではやばやと負けた高校の野球部(ド直球)(by先生)」に声をかけて撮影したそう。画面左側にはミロがアップで置いてあり、部員がマネージャーに「ミロが飲みたい」という商品連呼系のCM。広告系のクリエイティブ職の人は商品が全面に出ているCMを嫌うらしい(気持ちは少しわかる)。ところが先生は「私はあれは理解できませんね、商品出ててかっこいいじゃないですか、ミロオーレのとこなんか2つ出てんですよ」と無慈悲の反論に会場は大爆笑。
作品未満の要素収集の重要性~ドンタコス
他の事例も見ながら、「音は映像に意味をつけることができる」という話に。他にも、自分の好きな言葉を大切にしたほうがいいという話で、特に濁音系ではゴディバ、そしてキンチョールは語尾が良いと紹介された。そしてキットカットはABA’B’と表現できるという話に。私はここが一番斬新で衝撃的だったわ。こういう作品未満の散らばりがやがて方法論になるとのことだった。
最後に面白かったのはドンタコスのCMのメイキング。メキシコで撮影していて、似たような配置のところで日本でも撮影していたという。現地でオーディションをしたが、メキシコ人は全員リズム感がいいという偏見に苦しめられることとなる。なんと、オーディションを通過したおじさんは人柄はいいが踊れなかったのだ。なんとか代役が見つかって撮影ができたらしい。CMの右の方にジープが止まっているが、なんとエンジンが盗まれて動かないものらしい。撮影に想定していないのでどかしたところ、やっぱりあったほうが絵面が締まるとのことで再配置したらしい。ドンタコスのCMってかなりシンプルな印象だから、こんなに苦労して撮影しているとは思わなかったわ。
時間内に終わらず強制終了
ここでタイムキーパーから再度「おわり」が提示され、なんと予定の半分も終えることなくメインへ辿り着けないまま先生の講義は終了となった。重要なのはこれらをどうやって自分のオリジナルに活かすか。90分×2コマでかなり頭を使ったし楽しかったわ。ところで、これ続きやってくれるんですよね?ごきげんよう〜