ステキな4コマ

毎日更新。映画感想と日記の日替わり(ネタバレあり)。

差別が主題なのになぜ目が離せないのか「グリーンブック」

黒人差別も根強い1960年代の話で、白人(ヴァレロンガ)が不思議な黒人(シャーリー)の運転手として2ヶ月間旅をする話。そして行く先々で差別を受けるっていう感じなんだけれども、それだけのあらすじなのに、なぜか見てしまう。この作品には不思議な魅力があるわ。グリーンブックとは、黒人が快適に過ごせる場所を示したガイドマップになっている。

グリーンブック(字幕版)

【主要人物】
・ヴァレロンガ
・シャーリー

ヴァレロンガとシャーリーの出会いのシーンからして、かなり良い予感がした。シャーリーの持つ雰囲気には、不思議な風を起こしてくれそうな予感がしたのよね。

間の取り方が絶妙で、会話内容も魅力的。2人のキャラクターの作り込みがとてもよくできている証だわ。ヴァレロンガは下品で乱暴者だがマネージャーとしてはとにかく成果志向のやり手で、シャーリーを差別した連中には持ち前の暴力で対応したりと、視聴者に複雑な感情を抱かせる。シャーリーは不思議な気品が溢れていて、皿とフォークで食事をするからケンチキを食べたことがないだとか、手を10時の角度に持てとか言ってくる。

そんな2人の関係性は悪くなく旅は順調だが、店、飲食店、果ては警察なんかでも差別を受ける。差別は演奏先であっても行われる。なぜわざわざそんな条件の悪いところで演奏会をして回るのか(これが結局最後まで分からんかった)。差別に由来するトラブルの中で、シャーリーは見られたくない一面も見られてしまう(同性愛者)。そこからヴァレロンガは歩み寄り、「自分の曲を演奏しろ」と声をかけてより親しくなる。

「品位こそ勝利。いつも耐えているから我慢しろ」と言う考え方を持っていたシャーリーも最後の最後で考え方を改めて差別に反発する。最後に立ち寄ったバーで自分らしく曲を演じて、演奏ツアーは終了となった。道中で警察官に呼び止められるが、タイヤのパンクを指摘され、その間に交通整理をしてくれるという本当にひとかけらの親切なエピソードもあった。この良い話も、作品の最後のエッセンスになっている。演奏の旅から戻ったら町はクリスマス。ヴァレロンガ宅のパーティにシャーリーも招かれ、歓迎されるところで終了よ。

個人的ハイライトはクリスマスパーティーのシーンなんか子供たちが料理食べるんだけど、鯛食べてるのよね。こんな英語圏で鯛とか食べるんだしかもクリスマスに。この前鰻の骨を喉に詰まらせた身としては、鯛の骨は危ないと言う情報が入っていたのでつい注目したわ。おめでたいと鯛出すのは日本だけじゃないんだわね。

この話は実話を元にしているらしく、差別を話題に扱っているものの、説教臭くなく夢中でストーリーとして没入することができる。でも差別を受けていく話がどうしてこんなに魅力があるのか。それはやはりキャラクターの作り込み、絶妙な間の取り方がこの作品のポイントになっていて、ずっと見てしまう。これは傑作だわ!頭痛がするほど画面に集中させたという観点では怪作とも言えるわ。これは本当に見てよかった。ごきげんよう~

グリーンブック(字幕版)

グリーンブック(字幕版)

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