離婚した夫婦の夫が家政婦に扮して家族の元に戻る話。あろうことか新聞見出しの「放火の疑い」から「ミセス・ダウトファイアー」と名乗り家政婦となる。
【主要人物】
・夫(ミセス・ダウト)
・妻
・唐辛子食わされた人
積み上げて行った矛盾が明らかになって正体がバレ、最終的に総崩れになる。しかし夫は持ち前の演技力を活かしてチャンスを掴み、テレビ番組の出演までも果たす。家族からは「彼女」がいた時を惜しむ声も上がる。やがてとうとう父として監視員抜きで会えるようになり、家族の仲は進展していくのだった。
コメディなのもあり、心の描写はカメラワークではなく全部セリフに出すタイプ。最初はテンポが悪い映画かと感じていたが、ゆったり進行するのがいいのかもしれない。というのも、映像体験は必ずしもメインではなく、この作品が心に訴える手段の一つという感じがする。
この映画の特徴は人間性の表現にある。特に、悪いところが抑えられない=完璧ではないところがキャラクターの人間味につながっていると思う。それは妻も同じで、現状の受け入れをしながら成長してゆく物語と感じた。
さらに、物語のはじめでは未熟だった夫が妻を追い越して成長を牽引するところがポイント。特に夫は別の人間を演じたからメタ認知とか早くできていろいろ見えてきたのかな(雑)。家政婦の技術も1から勉強していたし、テレビ越しに夫が演じるダウトファイアーの発言(愛の形はそれぞれ)に妻が聞き入っていたわね。
そして正体がバレそうになるスリルはもちろん、2人を演じる不便さにダウトファイアーがつく悪態がこの映画のスパイスになっている。だいたい家政婦に扮して家に忍び込むという時点で悪事を働いているわけだから、「微笑ましい映画ですね」とは簡単にはならないところがエンディングの良さを盛り上げる。
さらに本編には恋のライバルとなる男性が登場する。ただ、ダウトファイアーにベンツのエンブレムを破壊されるわアレルギーの唐辛子を食わされるわでただ被害にあっただけの善良なエリート男だったわ。あるわねそういう不条理(雑)。
というわけで、離婚から始まる割には明るく描かれており、成長物語という点で画期的。物語とコメディのバランスも絶妙といった要素もあり、この映画は良作だったわ。ごきげんよう〜