「ミザリー」と言う小説シリーズを書いた有名な小説家が車事故に遭って、それを救助した元看護師に監禁される。ちょうど新作を書き終えたところから始まるが、机の上にタバコと酒が並んでいて、書き終わった後のルーティンがあるんだなと分かる。一言も発さない状況でも情報が詰め込まれていて、とてもよくできた作品であることを予期させる。
【主要人物】
・小説家
・元看護師
変な薬でじわじわと弱らされて車椅子から立ち直れない小説家。看護師の狂気は小説家と、それ以上にミザリーへの愛がもとになっている。結末が許せないから新作の原稿を焼かせるなど、精神面へのダメージもなかなかのもの。自分の意見を取り下げるかと思えば激昂したりする不安定さも絶望に拍車をかける。
看護師が出かけている間に何度か脱走を試みたりする。進展があることは確かだが、助かりそうで助からない。脱走を企てたことが落としかけたちっちゃいペンギンの置物の向きでバレる。この映画は、出そうで出ない、バレそうでバレない展開で魅せるが後半でこれらが積立預金のように襲ってくる。バレた結果、小説家はとうとう足を粉砕されてしまう(絶望)。
上記を上回る絶望のハイライトは、終盤で助けに来た保安官が目の前で射殺されてしまうシーン。私は思わず残り時間を確認したわ。ところが小説家は、ミザリー執筆を完遂しようと提案し、看護師好みの完成原稿を目の前で焼いて取っ組み合いになり、タイプライターで看護師を殺すことができて生還よ。
原作はスティーブン・キングということでストーリーも大満足だが、映画単品としても十分に素晴らしい。画面に映って主人公たちが関わったものはほぼ全てが意味を持っているという緻密な作りだ。カメラワークももちろん、背景美術や小物がキャラクターの生活ぶりを感じさせる。画面に1~2人しか出ないかつほとんど寝室で過ごすが、それでも退屈させない緊張感は演出の賜物。これは傑作だわ!ごきげんよう~