ステキな4コマ

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ダメなところもちゃんと全部書いてあったわ。書評その26「まんがトムソーヤ文庫 一握の砂」

「働けど働けど…」で有名で、大して働いていないことも周知の事実である石川啄木。この伝記を読むに至った経緯は下記の通り。以前、松尾芭蕉の伝記を読んで感動した私だが、母から心無い一言が。「伝記は人のきれいなところばかりを切り取るから当然だ」というのだ。それでは、フォローしようのない人材はどのように書かれるか見てみようということで啄木に白羽の矢が立ったという次第である。

結果として、「キレイめに書いた伝記でこれかい!」という感じであった。逆によく包み隠さずに漫画化してくださいましたというところ。構成としては、啄木の働いてない生涯を「貧乏です系の歌」と「ふるさと恋しい系の歌」が彩るというもの。

肝心の本編だが、投稿した作品が採用されないことに腹を立てた啄木が、いきなり他人の植木鉢を割っている。まだ18ページ目だぞ。人に金を借りようとシャカシャカ動くところはいいが、借りた金で銀座に繰り出してしまう啄木。基本的に「単身仕事に出て家族を呼んで借金して遊び歩いて仕事をさぼって金がなくなって実家に帰る」のとんでもないサイクルを複数回繰り返す。

肝心の歌は良かった。まあ、啄木のメインコンテンツだからね…。「目の前の菓子皿などをかりかりと…」の歌は面白かった。当時のひもじい状況が伝わってくる。「ふるさとの山にむかひていふことなし…」の歌も良かった。私も宮城県に帰省する立場なので「わかる~」みたいな感じだ。ちなみに、啄木は26歳で死去というのは意外だった。長生きしていたらすごい借金が嵩んでいそうだ。

これを読んだ直後、私は「本当にこの男は…ハア…(怒)」となっていたのだが、風呂に入った時に冷静になり「やはりこれは時代と貧困が生んだ悲しい男の物語では…」と考えさせられた。作中には与謝野晶子も出てきたがやはり貧乏エピソードばかり。歌で食べていくには厳しい世の中だったのだろう。一晩寝て更に冷静になった私は、「やっぱ啄木という個体がダメだろ」という結論に至った。

というわけで、伝記を書いている人たちも「こいつとんでもないな」と思っていたに違いない。啄木の金にだらしないところは、貧乏エピソードや苦労話である程度フォローされたものの、やはりこんな感じであった。植木鉢を割るなど、エピソードが極端でキャラが立っていることも事実で、忘れがたい一冊になった。ごきげんよう~